地図のいらない世界だけど,私たちは次の一歩がたどり着く先を知っている。いざ,その一歩を。
インターネットの海に漕ぎ出す人なら誰でも,大航海時代に黄金の国エルドラドを求めたスペイン人のように,海図のない航海を余儀なくされている。英国人の学者が「サイバースペース地図」(画像)を完成させた。だが,この地図は技術的な見地では正しいものではなく,芸術的な美を楽しむものとなっている。この本の結論は,サイバースペースには絶対的な地図はないということだ。
南アメリカの奥深くにあると云われた黄金郷,エルドラド。黄金や宝石があふれてという,伝説の街。インカ帝国のジャングルの中にあるとか,アンデスの山中から見晴らす山あいにあるとか,わずかな言い伝えや体験談だけが残るが,なにも確たるものがない。しかも,当時まったくの未開の地であった南米だ。多くの探検家が挑んでいって,そして,誰も発見できず,戻って来ないものも多かった。冒険家たちは,地図なんてない地であてもなくさまよい歩き,ただ,その地があることだけを信じて,進んだ。
エルドラドを信じることに,地図は必要なかった。サイバースペース地図も,同じ。私たちが日常触れている地図でさえ,利便性を求めて簡略化したスケッチ・ラフのようなものだ。記事中に出てくる英国の地下鉄路線図は,日本の営団地下鉄の路線地図が参考にしたもの。路線を理解するために徹底的に省略し,もっとも目に付く着色をしているものだ。ウェブの地図をIBMリサーチの研究員がつくったニュースもあったが(過去記事),昨日と今日では違う道が幾億とできて,北に辿る道と南に辿る道が交差しながら同じ道先を示している,ワイヤード。私たちは胸に手を当てて,道先を知る。そこに,地図はいらない。(情報tnx >ofuroheadさん)
|